両建ての概要
FX取引では、買いからも売りからも始めることができます。買いポジションとは、ある通貨を買って別の通貨を売ることで、その通貨ペアの価格が上昇すると利益が出る状態です。売りポジションとは、ある通貨を売って別の通貨を買うことで、その通貨ペアの価格が下降すると利益が出る状態です。
両建てとは、同じ通貨ペアの買いポジションと売りポジションを同時に保有することです。たとえば、米ドル/円の買いポジションと売りポジションを持つことで、一時的な損失の拡大やつなぎ売買をすることができます。同一通貨ペアで売り・買い同じ数量のポジションを保有していれば、理論上は決済している状態と同じで、数量に差がある場合にはその数量分のポジションを保有していることになります。
両建てのメリット
両建てには以下のようなメリットがあります。
損失拡大を防げる
両建てをすると、相場の変動による損失をカバーできます。たとえば、買いポジションを持っているときに相場が下落したら、同量の売りポジションを持つことで、含み損を抱えなくなります。その後、相場が上昇したら買いポジションを、下降したら売りポジションを決済することで、利益を確定できます。このように、両建てをすることで、相場の動きに合わせてポジションを調整できるので、損失拡大を防げます。
スワップポイントを狙える
スワップポイントとは、金利差による利益のことです。金利の高い通貨を買い、金利の低い通貨を売ったときに発生します。両建てをするときに、買いと売りのスワップポイントの合計がプラスになる通貨ペアを選べば、放置するだけで利益を得ることができます。たとえば、トルコリラ/円の通貨ペアでは、トルコリラの金利が高く、円の金利が低いので、トルコリラを買い、円を売るとスワップポイントがプラスになります。逆に、円を買い、トルコリラを売るとスワップポイントがマイナスになります。このとき、トルコリラ/円の買いポジションと売りポジションを同数保有すれば、スワップポイントの合計はプラスになります。このように、両建てをすることで、スワップポイントによる利益を狙えます。
両建てのデメリット
両建てには以下のようなデメリットがあります。
スプレッドの負担が増える
スプレッドとは、通貨ペアの買値と売値の差額のことで、FXの取引コストの一つです。両建てをすると、買いポジションと売りポジションの両方を取る必要があるので、スプレッドが2倍になります。たとえば、米ドル/円の通貨ペアで、買値が1ドル110.01円、売値が1ドル109.99円だとします。このとき、スプレッドは0.02円です。両建てをするときに、1ドル分の買いポジションと売りポジションを取ると、スプレッドの負担は0.04円になります。このように、両建てをすると、スプレッドの負担が増えるので、利益を出しにくくなります。
スワップポイントがマイナスになりやすい
スワップポイントを狙う両建てもありますが、その場合でも、買いと売りのスワップポイントの合計がプラスになるかを確認する必要があります。FX会社や通貨ペアによっては、買いと売りのスワップポイントの合計がマイナスになることが多いです。たとえば、ユーロ/円の通貨ペアでは、ユーロの金利が低く、円の金利がさらに低いので、ユーロを買い、円を売るとスワップポイントがプラスになります。逆に、円を買い、ユーロを売るとスワップポイントがマイナスになります。このとき、ユーロ/円の買いポジションと売りポジションを同数保有すれば、スワップポイントの合計はマイナスになります。このように、両建てをすると、スワップポイントがマイナスになりやすいので、損失を被る可能性があります。
タイミング次第では損失が拡大する
両建てをすると、相場の変動による損失をカバーできますが、それは同数のポジションを保有している場合に限ります。数量に差がある場合には、その差分のポジションによって損益が変動します。たとえば、米ドル/円の通貨ペアで、1ドル100円のときに、1万ドル分の買いポジションと5,000ドル分の売りポジションを持ったとします。このとき、5,000ドル分のポジションは両建てになっていますが、残りの5,000ドル分のポジションは買いポジションのままです。その後、相場が1ドル95円に下落したら、両建てのポジションは損益ゼロですが、買いポジションは25万円の損失になります。